(1)経営革新計画承認の本来の意味
「経営革新計画承認」は、
①新製品の開発または生産
②新役務の開発または提供
③商品の新たな生産または販売の方式
④役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動
の4つのいずれかの新事業活動によって経営革新を行う事業体に都道府県が承認するものである
(2)経営革新計画承認のバックグラウンド
「経営革新計画承認」の理論的バックグラウンドは、経済発展がイノベーションによってもたらされることを明らかにしようとした学者, シュンペーターである。彼は、「イノベーションとは、経営資源の「新しい結合」によって起きる,従来の延長線上での改善の積み重ねとは違った、非連続的な変化をいう」とし、この変化を創造的破壊と呼んだ。イノベーションは技術革新とも呼ばれ、技術の革新に重点が置かれることもあるが、彼は技術の革新だけでなく,次のような5つの種類がある。
①新しい製品やサービスの創出
イノベーションの典型的なもので、世の中にまだ知られていないものを新しく作り出すことである。よく挙げられる例であるが、馬車は何台つないでも鉄道にはかなわない。馬車から鉄道に変わるためには、そこに質的な変化がもたらされているからである。このような変化をシュンペーターは新しい製品の創出といったのである。ラジオからテレビへ,電話からSNS(ソーシャルネットサービス)への社会の変革は、このような技術革新によってなされてきた。新しいサービスの創出の例としてよく挙げられるのが「クロネコヤマトの宅急便」である。また、アマゾンの本のネット販売は,今までにないサービスの提供で、サービスの創出を行った。
②新しい生産方法の導入
経営革新というのは新しい製品やサービスを作り出すだけではない。新しい生産方法を導入することによっても,もたらされる。例としてトヨタのカンバン方式が挙げられるし、最近ではIOT(もののインターネットとのつながり)によって自動車産業に大いなる革新が起ころうとしている。
③新しい市場の開拓
従来,その企業が参加していなかった市場を開拓することである。例として、アマゾンが新しくスーパーマーケットに進出し、消費者に販売を行うことなどが挙げられる。それほど画期的なことではなくても,たとえば海外市場に新たに販路を作っていくこともイノベーションに当たるであろう。
④原料や半製品の新しい供給源の確保
原料や半製品の新しい供給源の確保としては、鉄鉱石・非鉄金属などの例があるが,インターネットの発達により、世界市場から製品の最適の調達を小売業としては最初に行ったウォルマートもこの中に入るであろう。
⑤新しい組織の実現
同業種の企業が新しく株式を持ち合ったり,あるいは新しく一緒に新会社を作って1つの部門を独立させるなど,新しい組織を作ることをいう。トラストなとは法律で禁じられているが,これに反しない範囲でのホールディング会社等による統合であれば,これにより新しい市場を開拓したりしやすくなるというメリットがある。