戦略① 顧客情報管理・活用の仕組みづくり
みなさんの会社では「顧客情報」をどのように管理していますか?
私がコンサルティングを通じて携わった約450社に関していうと、顧客情報を整理、共有し、有効に活用できている会社はごくわずかでした。本来、顧客情報は貴重な会社の財産です。 この管理・活用を徹底すれば会社の「稼ぐ力」を高めることができます。ですから、多くの中小企業が、ここに手をつけていないのは非常にもったいない状況であり、裏を返せば取り組めば取り組んだだけ成果が上がるといえるでしょう。
あなたの会社が次に紹介するA~Eのうち、一つでも該当するものがあれば、すぐに「顧客情報管理と活用の仕組みづくり」に取り組んでください。
A 顧客データ・情報を記録するフォームまたはシステムがない
B どんな顧客データ・情報を集めたらよいかが決められていない
C その報告のルールがない
D データ・情報管理の方法、場所が決められていない
E 顧客データ・情報の管理と活用が営業マンや担当者任せ
「顧客情報管理と活用の仕組みづくり」で取り組むべきは次の三つです。
【1】顧客情報の記録方法を決める
【2】管理方法を決める
【3】顧客情報の活用方法を決める
それぞれ手順を説明しましょう。
【1】顧客情報の記録方法を決める
まず、顧客情報を記録するフォーマットを社内で統一したものにします。
たとえば、「顧客情報シート」 「顧客カルテ」などの名称を決め、顧客のどんな情報を記録すればよいのか、社内で統一しましょう。こうすることによって、営業や接客、電話対応を行ったスタッフが顧客のどんな情報を集めればよいか把握でき、前掲Bの「どんなデータを集めたらよいか決められていない」といった問題も解決することができます。顧客情報が決まったらフォーマットに落とし込みましょう。
【2】管理方法を決める
【1】で決めたフォーマットに「誰が」「いつ」入力(記入)をして、「どこ」に 「どんな形で」保存するかを決めましょう。
「誰が」については、営業担当者が直接入力するのか、他に入力担当者を置くのか、営業だけではなく、全社員が入力や情報提供をするのかといったルールを決めます。
「いつ」については、毎日入力、更新していくのか、週1回情報を入力して最新の状態を保てばよいのか、主に入力の頻度のルールを決めておきます。
「どこ」「どんな形で」は、データとしてサーバーに保管するのか、顧客ファイルを作成して印刷した顧客情報シートを紙で保管するのかといったことや、保管場所も明確に決めます。
【3】顧客情報の活用方法を決める
次に 【2】で保存、蓄積された情報を「いつ」「誰が」「どうやって」 確認、共有するのかルールを決めます。 報告という形で共有するのか、情報を把握しておくべき人が自ら見にいくのか、会議の場で共有するのか、メールやグループウェアのようなシステムを活用するのか、報告や確認の「頻度」と「対象者」と「共有方法」を決めましょう。
顧客管理というと、システムやソフトウェアなどを導入することから検討する会社も多いようです。
しかし、これらに取り組んでも、操作方法やルールを対象者に浸透させるのが難しく、運用できない場合も少なくありません。こうなると、人件費も含めたコストが無駄になってしまいます。
中小企業の規模であれば、エクセルや紙ベースの顧客管理で十分かつ効果的に活用できるケースがほ\とんどです。 まずは、自社に必要かつ、身の丈にあった顧客管理・活用の仕組みを自分たちで考えてみましょう。
戦略② 顧客育成の仕組みづくり
「顧客育成の仕組みづくり」とは、自社の圧倒的なファンをつくるための仕組みです。顧客への情報提供やサービスを通じて関係性を徐々に強化しながらファンづくりに全社で取り組みます。そのために実践すべきことは次の二つです。
【1】顧客のランクづけ
【2】顧客のコミュニケーションルールと実践
順に見ていきましょう。
順に見ていきましょう。
【1】顧客のランクづけ
全既存顧客を重要度ごとに順位づけを行い、明確化し、これを全社員で共有します。そのためにまず重要度を測るための指標をいくつか決め、一定期間この指標にもとづいた数値を集計し、顧客のランク分けを行います。
具体的な指標としては、法人対象のビジネスの場合は、
・粗利益額/売上高/重点商品の取引額/取引期間/受注頻度/自社シェアなど
個人対象のビジネスの場合は、
・購買金額/購買頻度/重点商品購入額/新規客紹介人数/取引期間/イベント・フェア参加回数 など
を使えばよいでしょう。
これらの指標のなかから自社が重要視する指標を二つ掛け合わせて顧客をランクづけします。三つ以上の指標を使うと、顧客ランクを三つの視点から “立体的〟に把握する必要が生じて、複雑になるため、まずは二つの指標を決めて分類してみるとよいでしょう。
小売店で「購買金額」と「購買頻度」の二つを指標としてランクづけをしたケースを見てみましょ
う。
図の小売店の事例のように、縦軸を「購買金額」、横軸を「購買頻度」として二つの指標を掛け合せます。指標を計測する期間は3カ月とします。
次に、それぞれの指標でランクを分類するための境界線を決めます。 「購買金額」の境界線を3万円と10万円、「購買頻度」の境界線を3回と7回とすると、マトリクスが作成できます。いちばん右上(Aa)のマスに入る、10万円以上購入し、7回以上来店した顧客が“圧倒的ファン”すなわち超VIP客です。 他のマスも、右上に近いほど会社に貢献してくれている上位ランクの顧客になります。
まず、最新の3ヵ月で全顧客をこのマトリクスに当てはめて、それぞれのマスに何人の顧客がいるかをランクづけし、全社員で共有します。このとき超VIP客、できればVIP客までは名前(法人の場合は会社名)を把握するようにしましょう。

【2】顧客のコミュニケーションルールと実践
次に、上位ランクの顧客を増やすために、「顧客とのコミュニケーションのルール」を明確にして、これを実践します。具体的には、各ランクの顧客にどのようなアプローチを、どのようなタイミングで行うのかをルール化します。
①お客様感謝イベントや旅行、会社の記念行事へのご招待
②お誕生日のプレゼント
③利用金額や購買頻度に応じたプレゼント
④VIP客やお得意客向け特典(お得意様限定セール、 先行商品情報の提供、展示会への招待など)
⑤ニュースレターの送付
⑥DM
⑦メルマガなど
これらのコミュニケーション、すなわちアプローチの方法をさきほどの顧客ランクのマトリクスに当てはめます。 それによって、「コミュニケーション実行表」を作成します。 このコミュニケーションの実行を通じて、「新規客」を「既存客」に、「お得意客」を「VIP客」、「超VIP客」へと育てていくのです。 そして、3カ月スパンなら【4~6月】 【5~7月】 【6~8月】という期間のなかで毎月の各マスの顧客数を計測します。 そして効果を検証のうえ、コミュニケーションのルールを改善していきます。 これが「顧客育成の仕組みづくり」です。
この「顧客育成」の仕組みを実践することにより上位ランクの顧客が増え、収益に貢献してくれます。
法人対象のビジネスでもこの戦略が必要かつ有効なのは、私が実践し、実証済みです。