◎「評価制度」で社員を「理想の人材」に育てるには
ここまでご紹介した仕組みで、会社の目標達成のために必要な「戦略」「アクションプラン」に全社員が取り組んでいる状態を実現することができます。
ただし、これはあくまでも会社の目標達成に必要な役割を実行してもらうための育成システムです。
会社が求める人材になるために必要なことがすべて盛り込まれているわけではありません。そこで、「戦略」「アクションプラン」とは別に社員が理想の人材になるためにどのようなことをどういったステップで身につけていけばよいか明確にし、成長を支援していく必要があります。
これを実現するのが「評価制度」です。本来、「評価制度」とは、会社のビジョン実現に向けて社員の成長を支援していくためのものです。これを運用していくことによって全社員の成長が、会社が求めるレベルに到達しているのかどうかを常に把握できるようになります。
この「評価制度」のポイントは大きく二つあります。一つが評価基準作成、もう一つが三つ目のPDCAである評価制度の運用です。 早速、評価基準の作成方法を見ていきましょう。
◎「経営計画」から落とし込む四つの視点
「理想の人材」を育てるために、「経営計画」から次の四つの視点を評価基準に落とし込みましょう。
<1>5カ年事業計画
<2> 戦略
<3> ギャップを埋めるための課題
<4>行動理念
<1> 5カ年事業計画
【落とし込むこと】
会社の「売上」「粗利益」「原価」などの数値目標を達成するための部門、社員の業績結果数値目標と業績プロセス目標。
【効果】
社員個々人の目標達成と会社の目標達成が連動する。
<2> 戦略
【落とし込むこと】
「戦略」「アクションプラン」を実行、推進するために必要な仕事、能力。
【効果】
「戦略」「アクションプラン」を推進し、成果を出せる人材が育成できる。
<3> ギャップを埋めるための課題
【落とし込むこと】
「ギャップを埋めるための課題」を解決するために必要な能力や取組み。
【効果】
会社が求める理想の人材に向けて社員全員が着実にステップアップしていく。
<4>行動理念
【落とし込むこと】
「行動理念」に直結する仕事上での役割、実践してほしいこと。
【効果】
全社員が「経営理念」「基本方針」に沿った行動ができるようになる。
これらの四つの視点を落とし込んだ評価基準を作成、運用することで、社員を「経営計画」の内容にそって行動するように導くことができます。四つの視点はいずれも「経営計画」の構成要素であり、経営計画全体を実現するためには不可欠なものばかりです。おのずと社員が「経営計画」の内容を実践する機会が増え、その達成度は確実に高まります。
「経営計画」を実現するために、評価制度がいかに重要な役割を担っているかがご理解いただけるのではないでしょうか。
ところが、「経営計画」と「評価制度」双方が存在する会社であっても、この二つを連動させて運用しているところは私の知る範囲ではほとんどありませんでした。これは、「経営計画」は理念の浸透や数値目標達成のため、「評価制度」は賃金を決めるためというようにそれぞれ目的が違うと考えられていることが原因です。本当にもったいないことです。
特に、「評価制度」の目的はほとんどの会社で ”評価結果を明確にすること”や賃金を決定するための手段として導入されています。もちろん、適正な評価を行い、社員に納得してもらったうえで賃金を決定することも大事なことです。しかし、そこで満足するのではなく、評価結果を活用してその先にある人材の成長まで実現するのが「ビジョン実現型経営計画」の本来の目的です。その成長の方向性と、会社が目指すべき方向性とを一致させるために「経営計画」を活用するのです。これによって、会社も本人もハッピーな「理想の状態」が実現できるのです。